南アルプス縦走記 第参話

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明日から11月です。

ああ、スキーシーズンまで残り1か月。

ほんとオフシーズンは、あっという間です。

とりあえず、シーズンの準備としてハンターマウンテン早割を5枚ほど買いました。

危うく買い忘れるところでした。

 

ところで今シーズンは雪、降るんでしょうか?

朝晩は寒くなってきた時期ですが真夏の盆縦走記、中編です。


沼口

 

○8月9日(火) 4日目 晴れ

ルート:聖平小屋→聖岳(ひじりだけ)→奥聖岳→聖岳→兎岳→大沢岳→百閒洞(ひゃっけんぼら)山の家

3時過ぎに起床。うーん、今日は聖岳に挑む朝だ、と気合入れて起きる。起きたくないけど起きる。

サクッと飯食って、5時前に出発。今日はアップダウンが多い

今回の縦走の核心部と言えるかもしれない。

まずは薊畑(アザミバタ)まで登る。ウォーミングアップにはいい感じの登り。

程よく体も温まり、薊畑に着く。ん、今日も体は好調だ。

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デーンと、そびえる聖岳。右にあるのは道中にある小聖岳。

薊畑から聖岳へは標高差で600mほど。しかし見上げた感じは、それ以上のものを感じた。

名前に恥じない、その山容に何かを感じちゃったのかもしれない。

もっとも、聖(ひじり)とは ’へづる’ という方言から来ている説もあるとのことだけど。

薊畑からその先、小聖岳まではちょっときつい登りが続く。

 

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小聖岳から聖岳を望む。なんか進んでいないような・・・

行動食のヨウカン食いながら、小聖岳に到着。あれ、あんまり距離縮んでないんじゃねえか、これ。

聖岳は聖なる山。

もしや悪しき心を持つ人間は近づけないというのかっっ!!!?

僕、あんまり悪い人間じゃないよっ。

なんてくだらない妄想をしつつ、行動食を食う。

休憩中のおじさんがいて、この人とはテン場の百閒洞まで何度か顔を合わせた。

話しやすい感じで、良い年の取り方をしている素敵な山おじさんだ。

小聖おじさんと呼ばせていただこう。

 

休憩して聖岳にとりつく。

聖岳直下から山頂を望むと、そそり立つ壁のようで威圧感が・・・

斜度は急だし、足元はザレ。登りづらい。

道には小聖おじさんと、単独女性。二人ともいい感じのペースで、つかず離れず山頂を目指す。

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つづら折りの急な登りを終えて、やっとこさ聖岳の山頂へ。

 

苦労しつつ聖岳の山頂に到着すると、青空と南ア北部まで見渡せる景色が出迎えてくれた。

登り中、山頂から ちらちら覗き込んでいた兄ちゃんもいた。なんでも、記念写真を撮ってもらいたくて、ずっと人を待っていたそうだ。

別に、唾を飛ばしていたわけじゃないのか。

見るからに爽やかそうな兄ちゃんだ。俺はこんなタイプが苦手だ。同族嫌悪というやつか・・・

 

そんな彼は、俺のシャツを見て「僕のと同じですね!」と一言。確かに似ている。

そのあと「それだと2シーズン前モデルのやつですか?どっちもデザインいいですよね」

ああ、無駄にシーズンモデルとか熟知してるのも苦手なタイプだ。

うんざりしていると、小聖おじさんが話しかけてきた。

「いや、疲れたね。そのザックには何が入っているんだい?」

「飯です、すぐ腹減るんです。」

「腹減ってるのが分かるうちは元気だから大丈夫!」とアドバイス。

なるほど、空腹が分からないのは重症だな確かに。

腹ペコリストの僕は、死ぬ手前じゃないと、そんな状況にならなそうですが。

一通り満喫し写真を撮った後は、行動食とカメラを持って、奥聖岳へ向かう。

 

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右のピーク、奥聖までは目と鼻の先だ。

空荷の体は軽くてうれしい。思わず、小走り気味に進む。

楽しみだった聖岳に登り、明日は赤石岳。ワクワクは止まらないのだ。

たぶんアドレナリン出まくってたと思う。

 

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奥聖は、少し控えめな感じがして気に入った。三角点はこちらにしかない。

 

奥聖からは、また違った景色が見えて素晴らしかった。

これから先に行く兎岳、中盛丸山、大沢岳が一望できる。百閒洞の小屋も見えた。

翌日の赤石岳も、そびえたつ。

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ふむ、アップダウンが多いぜ。進みたくねえ!!!

 

兎岳の先、アップダウンを繰り返して、中盛丸山にガンっ!と上がる。再びアップダウンで大沢岳。

行ってやろうじゃないのという気持ちと、聖平小屋に帰っちゃう?という気持ちが交錯した。

交錯?いや、7:3くらいで小屋に帰っちゃうくらいだったかも。この時点で満足してしまった僕なのであった。

毎日晴れで、素晴らしい景色を見られれば、満足しちゃうよ。

 

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翌日登る赤石岳、ただただデカい・・・

明日の百名山は赤石岳か。今日に引き続き、明日も百名山。何とも豪華。

さて、再び聖岳に戻り、あの糞重いザックを背負わなくては。

嫌だなあ・・・

 

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聖~奥聖間は庭園チックな風景も

聖岳に戻ると、僕のザックにはアブが沢山飛んでいました。

そんなに臭いかボケがあ!!!と振り払う。

気を取り直し、聖岳から兎岳へ向かう。

まずはバシッと標高400mを下り、コルに。

そして200mの登り。ジャブのように効いてくる。

 

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ペンギンのような岩がピョコンと、お出迎え。

兎岳への登りは、思ったよりもサクサク登れた。

聖のそびえたつ感じとは違ったのも要因か。細かなアップダウンの後に、いつの間にかという感じだった。

 

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廃墟のような兎岳避難小屋
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正面から。何とも言えない雰囲気だ・・・

 

兎岳直下に避難小屋がある。

荒廃具合はなかなかである。こ、この雰囲気は何かマズい気がする。

扉は怖くて開けられなかった。

しかし、後に聞いた話だと、この小屋の中は山小屋によって きちんと手入れされているそうだ。

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小屋前に幕営跡もあるけれど、ここでは遠慮させてください・・・

 

そんなこんなで、兎岳に着。いやあ、疲れたな。

ちなみに兎岳、残念ながら頂上にバニーガールはいません。ムサイ男しかおりません。

そういやキャピキャピした山ガール、見てないなあ。

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兎らしさ、どこにもねえぜ
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聖岳を振り返る

聖岳からずいぶん下った。

遠く上河内岳も見える。何回も思うが、南アルプスはほんとうにデッカイ。

ここから先もアップダウンは続く。飯を食って気合を入れる。

 

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左方面の稜線を進む。左から2番目のモッコリが中盛丸山、勘弁してくれよと思った。
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右から小兎岳、小ピーク、中盛丸山、大沢岳。

まずは兎岳を下る。

小ピークに登り、再び下る。小兎岳南側のコルからは水場への道がある。気分転換に行ってみた。

水はキリリとうまかった。水量もまずまず。

そして小兎岳に登る。

 

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小兎から兎岳を見る。

先には中盛丸山がラスボスの様にそびえる。

大沢岳は計画通り、手前のコルで荷物デポすることにした。

 

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中盛丸山への、この登りはストレートパンチ級だ

中盛丸山への登りはキツく、何度か足が止まる。

気温も少し高い。早くテン場でゴロゴロしたい気持ちが急上昇した。

やっとの思いで登り切った丸山では、思わず「よしっ」と一言漏れた。

 

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山頂。大沢岳は斜めに切り立った感じのする、かっちょいい山。

頂上を満喫し、さっさと先へ。

コルへと下り、荷物をデポして大沢岳へ向かう。

大沢岳に向かう途中、雷鳥を見た。訪れる人が少ないからだろうか?

相変わらず近寄っても逃げない。

山頂からは赤石岳~悪沢岳が見えた。悪沢岳は縦走最後の百名山だ。いよいよクライマックスが近づいてきた。

本日泊まる百閒洞のテン場も見えた。早く寝っ転がりたい。

 

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大沢岳は、やや訪れる人が少ないイメージ。
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山頂からは、棚田みたいな百閒洞のテン場が見える。誰もいねえ!
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明日の赤石岳、明後日行く悪沢岳(’沢’字の下の文字)が見える

大沢岳の先、北側は百閒洞のテン場まで続く道があるのだが、浮石が多いらしい。

山と高原地図にも浮石多しと記載されていたし、そのルートで来た人にも浮石が多いと話を聞いた。

やはり安パイならデポ往復だな。

デポしたザックまで戻る途中、再び雷鳥を見る。雷鳥見ると何でこう、嬉しくなるかなあ。

 

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冬の白い姿もいいけど、夏色も好きだ

デポしたコルから百閒洞までは地味に長かった。日差しは暑いし喉が渇く。

13時、きつかった工程も終わり百閒洞山の家に到着した。

 

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百閒洞山の家。特製のカツが有名だ。

特製のカツも食べられるし、それをつまみにビール飲みたかったが、疲れを抜くことを考えて、この日もアルコールは我慢だ。

翌日はコースタイム、たったの5時間。嬉しいぞ、これは!。朝、メチャクチャゆっくりできるじゃん。

百閒洞山の家では、テン場を指定される。なんだこれ、早く着いても意味ねえじゃん。空いているのに、すぐ隣に人来るの嫌なんだが・・・

そんでトイレまで遠い。テン場までの帰りにある登りが地味にキツイんだよなあ。

俺にとって、今工程で一番盛り上がらなったテン場。

日記も書いて小説読んで、19時半 早めに就寝。

 

 

 

○8月10日(水) 5日目

ルート:百閒洞(ひゃっけんぼら)山の家→赤石岳→荒川小屋

4時半起床、遅めの6時発。

この日はコースタイムにして5時間ほど。すぐ歩き終わっちゃうので、ワクワクで出発。

まずは百閒平を目指す。朝から登りだが、今日も天気はいい。

おいおい、一体何日連続で晴れるんだ?と思ってしまう。ここまで5日連続で晴れなのだ。

 

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朝の陽ざしが気持ちい景色を作り出す。奥に荒川前岳・中岳、悪沢岳が見えた。

百閒平、一体どんな景色が広がるのだろう、と心待ちに登る。

登り切ると、ひらけた景色が眼前に広がった。なるほど、百閒平の名前にそぐわない風景だ。

この平坦なところを歩くのか、気持ちよさそうだと、またもやワクワクが止まらない

 

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(下)百閒平の標識より、百閒洞山の家 方面の景色。バーンと広がっております。

気持ちのいいトレイルなんだけれど、おお目の前にはデッカイ赤石岳が待っている。

登んなきゃダメ?コンディションの良い縦走で、すでに満足ボーイとなってしまった僕は弱気になる。

 

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気持ちのいいトレイルの終わり、登りが見えてくる・・・
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手前にある、馬の背の奥には赤石岳が!ひゃ、でっけええ

百閒平を後にして、まずは馬の背の登り。このピークの先は下りで一旦コルに出る。

そしてそこから、いよいよ赤石岳に取りつくのである。

ザレた赤石岳の姿が、だんだん目前に近づいてくる。

 

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馬の背より百閒平を振り返る。ああ、ほんと平らでした。昨日の死闘を繰り広げた山々も見える。
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赤石岳は、まずトラバースしながら登っていく。

はああ、ザレてて登り辛そう・・・

だの

早くお家帰りたいなあ

なんて、最高の天気なのに何たる罰当たりな考えをしていたのだろう当時の俺は。

日記にも楽しいはずなのに、楽しくない気持ちも出てきた とある。

これはあれだ、マリッジブルーとかの境地なのかな。これ以上の幸せは今後ないんじゃないか、とかいう くっさい現象ですわ。

旅が終わりに近づいてきたのも要因かもしれない。

ともかく、そんな思春期みたいにモヤモヤした思いを胸に抱きながらの、赤石岳の登り。

ペースが上がらねえええ!!!

トラバースを終えて、つづら折りの登り。足が何度も止まる。

こんな時って、毎回思うけど水がウメエんだよね・・・

 

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赤石岳トラバース中。この先のつづら折りは、手こずった。

そして、やっと赤石避難小屋が見えてきた。

相変わらずの突き抜ける青空に、テンションは急上昇してしまったのであった。

我ながら単純糞野郎である。

 

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赤石避難小屋。う、ここに泊まりてえと思うが時刻は8時。我慢しろ。

登り切り、先に進むと赤石岳頂上と避難小屋方面に分かれる。

まずは避難小屋近辺でも散策するか。

美味しい山頂は、あとに取っておく。

避難小屋というものの、山小屋みたい。

お土産のタオルとか買おうと思ったけど、管理人さんが不機嫌だったからやめておいた・・・

なんか平日なのに予約殺到だったからみたい。

気を取り直し、祠見たり、天空ベンチを見たりと散策。

いよいよメインディッシュの赤石岳山頂へと向かう。

 

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赤石岳避難小屋。聖平から ここまで1日で行くと言っていたおじさんは到着したのだろうか。ちなみに足取りは遅い。
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祠の付近では石が起立。なんなんだ、これは。
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天空に君臨せしは、ベンチ。天空ベェンンンンンンンチ!ここで愛を誓った人たちには幸せが訪れる

山頂には人が数人。なんかみんな、ザック下してゆっくりしてるなあ。

そんなに居心地良いのかな、と登ると・・・

なるほど、こりゃすげえやと感嘆する。

赤石岳山頂付近の景色、南アルプス北部まで見え、山のバーゲンセールだ。

例にもれず、山頂に長居してしまった。

 

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富士山バックの山頂碑。ロープがいらなかったな、失敗。
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赤石岳山頂より、百閒洞方面。兎岳、大沢岳がチョコンと見える。
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縦走路の先。悪沢岳、近くなってきた。悪沢の左、奥に見えるのは間ノ岳、農取岳。2年前の盆に行ったエリアだ。

飯食って、ザックにたかるアブを払って、さて出発しようかね。

俺のザック、そんなにいい臭いするかな?

 

時刻は9時前。なんだか時が過ぎるのが遅い気がする。

まずは小赤石岳とのコルへ向けて、赤石岳を下る。

小赤石岳の先は、肩まで気持ちの良い散歩道があるらしい。

どれどれ堪能してやろうじゃないのと、それを楽しみに登る。

この登りは、サクッと登る。相変わらず尻上がりなペース。

小赤石からの眺めも、素晴らしい。さっきまでいた赤石岳は悠然とそびえ、先の大聖寺平も見える。

 

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この日 最後の登り。
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小というものの、3000m越えの小赤石岳さん。標も立派だ。
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赤石岳。右には百閒平たちが見える。

小赤石岳の先は、お花畑があったり、やや平坦な道&涼しい風で、気持ち良かったっす。

本日の宿泊地、荒川小屋が見えた。テン場は、おお!がら空きじゃん!カメラの拡大、大活躍だ。

 

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大聖寺平から荒川小屋へはトラバース道だ。

小赤石の肩からは、大聖寺平まで下る。

本日2回目の○○平。そしてその先は、トラバースを経ていよいよ荒川小屋。

 

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大聖寺平、名前がいいね。
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大聖寺平から荒川岳(悪沢岳)方面を見る。いよいよ、明日登るのだ。

荒川小屋ではトランスジャパンアルプスレース(TJAR)のチェックポイントがあった。

 

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TJAR旗

TJARとは・・・

日本海側の富山湾から日本アルプスの北アルプス・中央アルプス・南アルプスを縦断して太平洋側の駿河湾までの約415キロメートルを一週間(+予備日1日)で、交通機関を一切使わずに自分の足で走る・歩くことで競う競技。山小屋での宿泊禁止でキャンプ指定地でのテント泊を行うなどの特別な大会ルールがあり、参加にも厳しい条件が付けられている。

―wikipedia―

なんともまあ、クレイジーなレースだ。

今回優勝の望月さんは、なんと5日を切ってゴール。その望月さんがトップ通過&飯・休憩した荒川小屋

でタイミングよく会うことができた。

といってもテントから顔を出して、見ただけだけど。

この翌日、に荒川前岳付近で2名、最終日に畑薙ダムへ向けて東俣林道を歩いているときに1名を見かけた。

これだけの距離を、あんな短時間で走りぬけるなんて、一般人には無理です・・・

今回の荒川小屋でのテン場は、広いエリアとおひとり様のエリアが3か所ほど。

10時半過ぎに早すぎる到着をしてしまった僕は、選び放題だったので、もちろん御一人様ゾーンへ。

トイレは少し遠いが、最高のテン場だった。

 

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御一人様ゾーン、最高でした。また泊まりたい。

翌日はいよいよ悪沢岳。

縦走のクライマックスだ、そしてその日は8月11日。山の日!

なんか連日の天気といい、クライマックスに山の日、すごいラッキーボーイだったなあ。

 


ということで、中編でした。

後編はまた後日。

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